2016 グランプリ決定!
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10月15日(土)に行われた No Maps / Film 第11回 札幌国際短編映画祭のアワードセレモニーにて、IFMC 2016のグランプリが発表されました。

【グランプリ】 チーム「motobu」  僕の夏休み

【準グランプリ】 チーム「黒豆」  舞台袖のヒーロー
【3位  入賞】 チーム「美国コハ(24)」 Am I a HERO?


入賞3作品の上映を行った後に、3位より順にチーム名が発表されました。グランプリを獲得したのは、昨年に続き北海道外となる沖縄からの参加チームでした。ゲスト審査員の川尻竜一氏より各賞の受賞者に直接、賞状が授与され、その後、コンテストについての総評をお話いただきました。

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2016年度の Iron Film Maker Contest は、24時間以内に「隠れたヒーロー」をテーマとして、当日課題「こども役の出演」・「日常を描く」を条件に1分の短編映画を制作し、その作品性を競い合いました。
オンライン放送にてコンテスト運営を行うことにより北海道、東京、沖縄といった全国より11チーム(審査対象チーム数10 | タイムアウトによる失格チーム数1)が参加し、コンテスト終了後すぐに審査対象作品のプレビューと審査が執り行われました。
審査員同士で激論を交わす中、約2時間ほどでようやく審査を終え、入賞3チームをオンライン放送にて即日発表しました。
その後、入賞3チームは第11回札幌国際短編映画祭のオフィシャルコンペティションの表彰も行われるアワードセレモニー内にて、グランプリを含む順位の発表と表彰を受けました。

[審査員一覧]
川尻竜一(かわじりりゅういち) グラフィックデザイナー
倉本浩平(くらもとこうへい) NoMaps / Film
大室昌也(おおむろまさや) 札幌国際ステューデント短編映画祭 実行委員
佐藤勇佑(さとうゆうすけ) IFMC 学生運営委員 代表


[審 査]
運営側が提示した必要最低条件をしっかりと満たしながら、さらにその条件を用いてどれだけ作品を魅力的に できるか。テーマ「隠れたヒーロー」に各作家がどれだけしっかりと向き合っているのか、そしてそれを新た なアイディアとしてどれだけ映像で描くことができているかを基準としています。

『僕の夏休み』
いつまでも想い出に残るこどもの夏休み。何気ない楽しさ。そんな沖縄の日常に潜む問題に向き合った作品。 1 分という時間の中でテーマをしっかりと描きながら、映像に作家の放つメッセージを感じることができた。何 気ないこのこどもたちの日常を守るために真剣になれる存在こそがヒーローなのだろう。北海道にいる私たち から見ると、こんな日常こそ対岸の非日常世界に見えてしまう。しかし沖縄に住む人たちにとってはこれこそ が日常・真実であり、対岸意識を持つ私たちに当事者としての目を持つよう訴えかけている。非常にメッセー ジ性の高い作品だと感じた。審査の結果グランプリ受賞作品となったが、全エントリー作品の中で最もドキッ とさせられた 1 分間だった。

『舞台袖のヒーロー』
イラストだけの展開で、初見では少し単調に感じてしまったが、じっくりと細部を見渡すと非常に作家のこだわりを感 じた。タイトルの「舞台袖」はテーマの「隠れた」を暗喩しており、物語上、子供が重要な役割を担っている点が良か った。単調に感じられたイラストだけの世界で BGM をそのまま流すのではなく、途中でブザー音を挿入し、物語に 起伏をもたらしていた点に工夫を感じた。少女にとって舞台でヒーローになりたい少年。1 分のストーリーの中で、 視聴者を一旦ミスリードさせ、最後には少年を輝かせるために日々を一緒に過ごした先生こそが本当のヒーローで あると見事にストーリーを落とし込んでいる点が非常に良かった。そして、本作は応募作品の中で唯一の手書きア ニメーション動画である。24 時間という短い時間で創り上げるのは大変だったと思うが、全体的にうまくまとまった 完成度の高い作品であった。

『Am I a HERO?』
「隠れたヒーロー」というテーマの「隠れた」というワードをダブルミーニングでとらえることができる結末のチャーミ ングさにくすぐられた。24 時間という限られた制作時間が設定されているにも関わらず、衣裳や小道具、ロケーショ ンなどの細かな部分までしっかりと作り込まれており、「美国コハ(24) ワールド」に集中力を持って気持ちよく入り 込むことができた。コメディという表現方法の中で、しっかりとテーマに向き合い、ストーリー展開にも落とし込まれて いた。気になった点として、「子役」・「日常」という 2 つのテーマの取り扱い方が雑な印象を受けてしまい、「こども」 の出演に必然性が感じられなかった。このチーム持ち前の「画ヂカラの強さ」とでも言えばよいのだろうか。そのポ ップさ・キャッチーさはそのままに、そこにアイデアが光る脚本がプラスされた進化形に期待したい。

『Dream shatter = Bottom Human?』
テンポもよく、編集の技術も非常に高かった。また別録による音声にエフェクトを加え、効果的に使用していた。全 体的にストーリーとしても、追っかけやすかった。しかし印象的な"タバコ"の存在に必然性を感じることができず、 どうしても内容として未消化に感じてしまった。子どもの「将来の夢は F1 レーサー」という部分を伏線として用いる など、もう1つ要素がプラスされていれば、よりクオリティの高い作品になったのではないかと感じた。

Next HERO is...』
過去、現在、未来と時間軸を描くファンタジー作品であった。24 時間という短い時間の中で、とても頑張ったチャレ ンジである。若干、ストーリー展開をわかりずらくするカットがあったので、もう少し整理ができるとよかった。

『World without heroes/ヒーローの要らない世界』
技術的にとても質の高い作品であった。またバラエティに富んだキャスティングも魅力的であった。グランプリ作と同 じく、何があろうとも日常を営めることこそ幸せであって、そうあるために生き続ける人こそヒーローであると描いて いる。よいコンセプトであったが、タイトルから容易に連想されやすい「既視感」のある映像にとどまってしまい、枠を 飛び出せなかった印象を受けた。赤ちゃんや母親の登場するシーンは演技もナチュラルで、映像の色温度も心地 良かったが、映像の上に表示される文字の書体選び・大きさ・レイアウトなどが稚拙であったため、ストーリーに入り 込むのに集中力を欠いた印象を受けた。日常の要素が強かったグランプリ作とどうしても比較されてしまい評価が 伸びず、よいコンセプトだっただけに心残りであると同時に、同じコンセプトのグランプリ作と同じ土俵に立ってしまっ たことに不運さを感じた。

『ジュウガツツイタチ』
こども役の使い方、そして偶然の行動で誰もがヒーローになる可能性をストーリーして描いていたのがとてもよかっ た。制作開始日となった「10 月 1 日」という日付の表記の仕方を「10/01」と変換、さらに漢数字に変換することで 「一○○一」となり、メガネを記号化したような文字面がタイトルにも使用されていることからこのロジックから派生し た脚本ということは理解できた。ただ、この点にこだわってしまったためか「メガネ」がテーマの作品となってしまい、 「日常」こそ舞台となっていたものの「隠れたヒーロー」・「子役」というテーマの取り扱いが取って付けたようになって しまっていたように感じた。そのため、審査において重要な 3 つテーマが「メガネ」の影に隠れてしまった印象を受 けた。この点は、脚本の企画段階での焦点のずれを指摘せざるを得ない。シュールさを演出した狙いも理解できた が、あざとさとして映ってしまい、作品の世界に入り込むことができなかった。この点は、映像作品を構成する全て の要素への気配り、さらには、それぞれのディテールのクオリティを高めていくことで解消できるのではないだろう か。

『イラストレーターの日常』
ある瞬間に二者の間で"ヒーロー"が入れ替わるというアイディアは非常に秀逸であった。このコンセプトをより明確 にストーリーとして描けていれば、評価もあがったように思われる。

『生活』
おそらくは、ヒーローのなんてことのない本当の日常を描いているのであろう。誰もが賞賛するヒーローだって、生き ている、日々を過ごしている、私たちと変わらない、だとすれば誰もがヒーローになりうる、作品はそう訴えかけてい るように感じた。コンセプトは良かったので、もう1スパイス加えることによってストーリーに変化をもたらしてほしい。

『おとうさん』
カメラアングル、映像の色味、演出、非常に作家のこだわりを感じる作品であった。1st カットの逆行に並ぶ同僚た ちの画と演技は秀逸であったと感じた。ストーリーとしては王道的であり、非常に見やすいものであった。ただ、見 やすいが故に、展開が少しありきたりに感じられてしまったのが残念だった。今後の活躍に期待したい。


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24時間に挑み続けた鉄人たちに想いを寄せて

このコンペティションの難しさは
24 時間という制限時間の中で 1 分間の映像を完成させなければならないこと、さらには、主催者から提示されるテーマが複数あり、参加チームがすべてのテーマを知ることができるのは開会式で あるという点にある。つまり、制限時間の針が動き出した瞬間に 0 から映像制作をスタートさせねばならないのだ。

今年度の 3 つのテーマは、「隠れたヒーロー」・「子役」・「日常」であったが、エントリー10 作品のうち、約半数ほどが脚本のアイデア段階で、どこかで観たことのある「既視感」の枠から飛び出すことができなかった印象だ。「24 時 間」という限られた制作時間は、大変厳しいものであったと想像できるが、どのチームにも平等に与えられた時間であることに変わりはない。その、1 秒・1 分・1 時間を、いかに高いクリエイティビティを持って消化することができたか、この点が審査での明暗を分けたように思う。

グランプリを受賞した「僕の夏休み」という作品は「隠れたヒーロー」・「子役」・「日常」という 3 つのテーマをバランス 良く共存させた脚本の素晴らしさが際立っていた。映像の美しさ、緻密に計算された編集、メッセージ性などどれをとっても素晴らしいクオリティが保たれ、24 時間で制作された作品であるということを思わず疑ってしまうほどの完成度であった。準グランプリ以下の作品に圧倒的な力の差を見せつけるかたちでのグランプリ受賞だった。 作品を観ることで、映像に携わる参加者の皆様だからこそ、その事実を受け入れていただけるものと信じたい。コンペティションというものは、順位や勝敗が明瞭になる場であり、その結果は喜怒哀楽では括れないほど多種多様な 感情を生むことと思うが、どの感情もこのような場に参加することでしか得ることのできない貴重な経験となるはずだ。本コンペティションにおいて、特別な 24 時間+αの経験をした全エントリーチームの今後の活躍を期待したい。

IFMC2016 審査員 一同







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